2025年問題と介護業界への影響とは?介護人材不足への対策と企業が今すべきこと

【はじめに】

 2025年、日本の社会に大きな転機が訪れます。それが「2025年問題」。これからの日本で75歳以上の高齢者人口が急増し、介護業界ではかつてない人材不足が深刻化する見込みです。

 この現象が日本の社会全体、特に介護現場や企業活動にどのような影響を与えるのか?そして私たちが今から取り組むべき対策とは何なのか?

 この記事では、専門的な知識を交えつつ、わかりやすく解説します。実際のデータや事例をもとに、現状と将来の展望を見据えた解決策をご提案します。

目次

1. 2025年問題とは?その概要と背景

2025年問題の定義:後期高齢者(75歳以上)の急増による社会問題

 まず「2025年問題」とは、日本において2025年を境に75歳以上の高齢者が急増し、その結果、介護や医療の需要が飛躍的に増加することで起こる社会問題を指します。

 これは、いわゆる「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)の方々が75歳以上になるタイミングと重なるためです。

 この問題は、日本が世界で最も早く高齢化を迎えているという事実に起因しています。内閣府のデータによれば、2025年には日本の総人口の約2.6人に1人が65歳以上、そして65歳以上の高齢者人口は約3,677万人に達すると予想されています。

 このことは、介護の必要性が急速に高まる一方で、それを支える人材の確保がますます困難になることを意味します。

日本社会への影響:労働力の減少、社会保障費の増加

 2025年問題がもたらす影響は多岐にわたりますが、特に深刻なのが「労働力の減少」「社会保障費の増加」です。

労働力の減少

 日本では少子化が進んでおり、働く世代が減少する一方で高齢者が増加しています。

 これにより、働き手が減ることで経済成長が鈍化し、生産性が低下します。労働力が不足すると、企業は人材確保に苦労し、事業の成長を阻害する要因となります。

社会保障費の増加

 高齢者の増加に伴い、医療費や介護費用も増加します。これにより、現役世代が支払う社会保険料や税金が増えるだけでなく、国全体の財政負担も重くなります。

 厚生労働省の推計によると、社会保障給付費は、年々増加し、2024年(予算ベース)では、137.8兆円(対GDP比22.4%)となっています。今後も、高齢化に伴って、社会保障給付費の増加が見込まれます。この増加分は、現役世代の収入を圧迫するだけでなく、将来の社会保障制度の維持も危ぶまれる状況です。

介護業界の現状:慢性的な人材不足、今後の課題

 現在の介護業界は、すでに人材不足が深刻化しています。厚生労働省の調査では、2026年にはこの数が約25万人に達すると予測されています。

 このままでは、介護サービスを必要とする高齢者が増える一方で、それを支える人材が圧倒的に足りない状況に陥ります。

2. 2025年問題が介護業界に与える影響

介護現場での影響

 2025年問題は介護現場に多大な影響を及ぼします。

人材不足の深刻化

 先述の通り、2026年には約25万人の介護職員が不足すると予測されています。

 これは、介護現場のサービス提供に大きな影響を与え、ケアの質を維持することが困難になる可能性があります。具体的には、1人の職員が担当する利用者数が増えることで、細やかなケアが難しくなり、結果的に利用者の満足度が低下します。

介護難民の増加

 「介護難民」という言葉をご存知でしょうか?これは、介護サービスを受けたくても受けられない高齢者のことを指します。

 介護施設の定員オーバーや人手不足により、介護難民が増えると、家族が介護を担わざるを得なくなります。これにより、仕事を辞めて介護に専念する人が増え、家庭全体の収入が減少するなど、生活への影響も深刻です。

医療・福祉施設への影響

サービスの質低下

 介護現場における人材不足は、医療・福祉施設全体にも影響を及ぼします。特に、スタッフ1人あたりの業務量が増えることで、ケアの質が低下するリスクがあります。

 例えば、食事や入浴のサポートが十分に行き届かない、利用者への対応が遅れるといった事例が増える可能性があります。

医療従事者の負担増

 厚生労働省によると、看護職員も2025年には約13万人不足すると予測されています。

 医療現場では、患者のケアが十分に行き渡らない状況が増え、医療従事者の負担が増加します。これにより、医療事故のリスクが高まるなど、サービス提供の質が低下する懸念があります。

3. 介護人材不足が生み出す懸念点と社会への影響

懸念点1:人的資源の不足

 2025年問題が進む中、介護人材の不足は、単に働き手が足りないというだけでなく、その背後にある「人的資源の質と成長」が停滞している点も大きな問題です。具体的には、次のような事態が起こる可能性があります。

介護職への応募者減少

 介護業界における人材不足の根本的な原因の一つは、給与水準の低さと厳しい労働環境です。

 例えば、一般的なサラリーマンの年収が平均450万円程度と言われている中で、介護職の平均年収は約360万円と低い水準にとどまっています。

 これは、介護業界への応募者が少なく、結果として人材不足が深刻化している要因の一つです。

 さらに、介護現場では身体的な負担が大きく、長時間労働も珍しくありません。特に夜勤のある職場では、睡眠不足や身体的な疲労から、離職率も高くなっているのが現状です。

 このような状況では、若い世代が介護職を選択する動機が薄れてしまい、人材の確保がますます難しくなります。

外国人介護士の受け入れに関する課題

 近年、政府は外国人労働者の受け入れを進める政策を打ち出しています。

 特に「特定技能制度」に介護が制定されたことによって、多くの外国人介護士が日本で働くようになりました。しかし、言葉や文化の違いによるコミュニケーションの課題は深刻です。

 例えば、日本語が十分に話せない外国人介護士の場合、利用者との意思疎通がうまくいかず、ケアの質が低下するリスクがあります。また、文化的な違いから利用者が戸惑いを感じるケースも少なくありません。

 こうした課題を解消し、外国人介護士が日本の介護現場でスムーズに働けるようになるためには、介護業界全体でのサポート体制の強化が必要です。

4. 企業が取り組むべき3つの対策

(1)スキルを持つ人材のパフォーマンス低下を防止する

 2025年問題に向けて、企業がまず取り組むべきは、スキルを持った人材が介護を理由に仕事を辞めたり、パフォーマンスを落とさないような支援策を講じることです。

介護離職を防ぐための支援制度

① 介護休業制度の整備
 多くの企業ではすでに「介護休業制度」が導入されていますが、実際に活用できている従業員は限られています。これは、介護休業を取得することに対して「職場に迷惑をかける」という罪悪感や、休業中の収入が減少するという不安があるためです。

 企業は、従業員が安心して介護休業を取得できるようにするため、まずは「介護休業中の給与補填制度」を整備することが重要です。たとえば、企業独自の補助金を設けたり、介護休業中に一定の給与を支給することで、従業員が経済的不安を感じずに介護に専念できる環境を提供できます。

 また、介護休業制度の利用に関する情報を積極的に社内で周知し、従業員が制度を知り、利用しやすくすることも大切です。これにより、介護が必要になった場合でも、離職することなく継続的に働くことが可能となります。

② 短時間勤務制度の導入
 介護は突発的な出来事が多く、従業員がフルタイムで働くことが難しいケースもあります。そのため、企業は短時間勤務や時短勤務制度を導入し、従業員が介護と仕事を両立できるような働き方を提供することが求められます。

 たとえば、1日の労働時間を4~6時間に短縮するだけでなく、出社と退社の時間を柔軟に設定できる制度を導入することで、従業員は介護が必要な家族のサポートをしながら働くことが可能となります。短時間勤務の従業員には、プロジェクト単位での成果を評価するなど、勤務時間だけでなく成果を重視する評価制度に切り替えることも有効です。

在宅勤務や時短勤務の導入

① テレワークの導入で介護と仕事の両立を支援
  近年、コロナ禍の影響で在宅勤務(テレワーク)が普及しましたが、介護と仕事の両立を図る上でも在宅勤務は非常に効果的です。在宅勤務を導入することで、従業員は介護が必要な家族を見守りながら仕事ができるため、介護離職を防ぐことができます。

 具体的な取り組みとして、企業は在宅勤務に必要なIT環境の整備を行うことが求められます。例えば、社内システムへのリモートアクセス環境を整備し、オンライン会議ツールやチャットツールを導入することで、従業員がオフィスと変わらない業務を在宅で行えるようにすることが必要です。

 また、在宅勤務をサポートするための「在宅勤務手当」や「通信費補助」などを提供することで、従業員が安心してテレワークに取り組むことができます。

② フレキシブルな時短勤務制度の提供
 介護を必要とする家族がいる場合、従業員は勤務時間の調整が必要となるケースが多くあります。そのため、企業は従業員が柔軟に勤務時間を調整できる「フレックス勤務制度」を導入することが重要です。

 例えば、午前中だけの勤務や午後からの勤務、あるいは週3日勤務といった形で勤務日数や時間を調整することが可能な制度を設けることで、従業員は介護と仕事の両立がしやすくなります。このような制度は、介護の状況が変化しやすい従業員にとって非常に有益であり、結果的に離職を防止することにつながります。

(2)離職を防止する

 2025年問題に対応するためには、従業員の離職を防ぐことが重要です。

 介護と仕事を両立できずに離職してしまうケースが増えると、企業にとっては貴重な人材を失うだけでなく、採用や育成にかかるコストが増加します。

 そこで、企業は従業員が介護を理由に離職しないよう、積極的に取り組む必要があります。

介護支援制度の充実

① 介護者をサポートする休暇・休業制度の整備
 介護支援制度の一環として、「介護休暇制度」「介護休業制度」の整備は不可欠です。これらの制度を整えることで、従業員は家族の介護が必要なときに休暇を取得し、しっかりとサポートできるようになります。

 例えば、家族の急な体調悪化や、デイサービスの利用時間外の介助が必要な場合でも、介護休暇を取得することで、離職せずに対応することが可能です。

 多くの企業では法律に定められた介護休暇を提供していますが、実際には「1日単位」「半日単位」でしか取得できないケースが多いです。

 これに対して、柔軟に「時間単位」での取得を認めることで、従業員が無理なく介護と仕事を両立しやすくなります。例えば、午前中だけ介護のために休暇を取って午後から出社する、あるいは1時間だけ早退して介護サービスの送り迎えをするなど、従業員の状況に合わせた使い方ができるようにすることが重要です。

② 経済的支援を提供する介護手当の導入
 介護にかかる費用は、家族にとって大きな負担です。厚生労働省の調査によると、介護にかかる平均的な費用は月額約7~8万円と言われています。このような経済的負担を軽減するために、企業が従業員に対して「介護手当」を支給することも有効な対策です。

 例えば、毎月数万円の介護手当を支給することで、従業員は介護にかかる費用を賄いやすくなり、経済的不安を抱えずに仕事を続けることができます。このような支援は、従業員にとって大きな安心材料となり、離職を防ぐ効果が期待できます。

フレキシブルな働き方の提供

① 介護と仕事を両立しやすい「時差勤務制度」の導入
 介護と仕事を両立する従業員にとって、通勤時間や勤務時間を自由に調整できる「時差勤務制度」は非常に有益です。
 例えば、朝の介護を終えてから出勤するために通常より遅めに出社したり、夕方の介護のために早めに退社したりすることが可能な制度を導入することで、従業員は介護に必要な時間を確保できます。

さらに、企業はこのような制度を「部分的なテレワーク」と組み合わせることで、さらに柔軟な働き方を提供できます。例えば、週に数日はオフィス勤務、その他の日は在宅勤務を組み合わせることで、従業員は介護が必要な時間帯に家にいることができ、安心して家族をケアすることが可能です。

② 介護と両立できる副業・兼業の推奨
 近年、政府は「副業・兼業」の推進を進めており、多くの企業が従業員に対して副業を認めるようになっています。副業を通じて収入を増やすことができれば、介護にかかる費用をカバーすることができ、家計の安定につながります。

また、副業をすることで介護業界に対する理解を深めることもできるため、家族の介護に対する知識が向上する効果も期待できます。
 企業は副業をサポートするために、従業員が兼業に関する情報を入手できるセミナーを開催したり、社内で副業支援を行う窓口を設けることも有効です。

(3)従業員のエンゲージメント向上

 介護と仕事の両立が難しいと感じる従業員が増えると、企業に対する不満やストレスが溜まり、結果的に離職につながる可能性が高まります。そのため、企業は従業員のエンゲージメントを向上させる取り組みを進めることが重要です。

介護と仕事の両立を支援する研修

① 介護の基礎知識やスキルを学べる研修の提供
 企業が従業員に対して、介護の基礎知識やスキルを学べる研修を提供することで、介護に対する不安を軽減することができます。
 例えば、介護の基本的な介助方法や認知症への対応、福祉用具の使い方などを学ぶことで、介護未経験の従業員でも自信を持って家族をケアできるようになります。

 また、介護保険制度の利用方法や地域で受けられる介護サービスについても研修で説明することで、従業員が適切なサポートを受けながら介護と仕事を両立できる環境を整えられます。
 こうした研修は、オンラインでの実施やeラーニングを活用することで、多くの従業員が参加しやすくなるでしょう。

② 介護経験者による「経験談シェア」の場の提供
 同じ企業内で介護経験者による「経験談シェア」を行う場を提供することで、介護に直面している従業員同士が情報を交換し、支え合える環境を作ることができます。
 実際に介護を経験した先輩社員からリアルなアドバイスを受けることで、他の従業員も自分だけではないと感じ、介護と仕事の両立に対する意欲が高まることが期待できます。

社内での相談窓口の設置

① 介護に関する専門相談員の配置
 介護に直面した従業員が気軽に相談できるように、企業内に介護に関する専門相談員を配置することも有効な対策です。
 例えば、介護経験のある社員や、介護福祉士の資格を持つ専門家を相談員として配置することで、従業員は介護に関する疑問や悩みを解消しやすくなります。

 また、相談員が従業員と一緒に介護サービスの選択やケアプランの作成をサポートすることで、従業員が安心して介護に取り組むことができます。
 このようなサポートは、従業員のストレス軽減や介護離職の防止に大きく寄与します。

② オンライン相談窓口の活用
 さらに、相談窓口をオンラインで開設することも、忙しい従業員にとって利用しやすい環境を整える手段です。
 オンライン相談窓口では、ビデオ通話やチャットを通じて専門家と気軽に話すことができるため、介護に関する悩みを早期に解決することが可能です。
 特に在宅勤務の従業員や遠方に住む従業員にとって、オンライン相談窓口は非常に便利なサポート体制となります。

5. 介護業界の変革と将来性

 2025年問題は日本全体の課題であり、特に介護業界にとっては深刻な影響を与えます。そこで、今後の介護業界を支えていくために必要な変革や将来性について、具体的に解説します。

地域包括ケアシステム:地域で支えるケア体制の構築

地域包括ケアシステムとは?
 地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることを支える仕組みです。具体的には、医療・介護・福祉などのサービスが地域で一体となり、生活支援やケアを提供するシステムです。これにより、高齢者は住み慣れた自宅や地域で安心して生活を続けることができます。

 現在、多くの介護施設では人材不足が深刻化しており、入居者へのサービスが十分に行き届かないケースも見られます。しかし、地域包括ケアシステムを導入することで、高齢者が介護施設だけでなく、在宅や地域で必要なケアを受けられるようになるため、施設の負担を軽減することが可能です。

地域包括ケアシステムの構築に向けた具体的な取り組み

訪問介護・看護サービスの充実
 高齢者が自宅で暮らし続けられるよう、訪問介護や訪問看護のサービスを充実させることが必要です。これにより、入浴や食事のサポート、服薬管理など、日常生活におけるサポートを受けられるため、介護施設に入所せずとも生活を続けることが可能になります。

地域の多職種連携
 地域包括ケアシステムを効果的に機能させるためには、医師、看護師、ケアマネジャー、理学療法士、介護職員など、多職種の連携が不可欠です。例えば、月に一度、多職種のメンバーが集まり、高齢者一人ひとりのケアプランを共有し、適切なケアを提供できるよう調整する仕組みを作ることが重要です。

地域住民の参加とボランティア活動の推進
  地域住民も、地域包括ケアシステムの一員として参加することが求められます。例えば、買い物支援や話し相手となるボランティア活動を通じて、高齢者の生活をサポートすることが可能です。地域全体で支え合う仕組みを作ることで、高齢者が孤立することなく、安心して暮らせる環境が整います。

介護DXの導入:テクノロジーによる業務効率化と人手不足解消

介護DXとは?
  介護DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して介護業務を効率化し、人手不足を解消する取り組みです。具体的には、介護ロボットやAI、ICT(情報通信技術)を導入することで、介護職員の負担を軽減し、利用者により質の高いケアを提供することを目指します。

介護DXの具体的な導入事例

介護ロボットの活用
 介護ロボットは、移動支援や排泄介助、見守りなど、さまざまな場面で活用されています。例えば、歩行が困難な利用者の移動をサポートする「歩行支援ロボット」や、夜間に利用者がベッドから離れた際に通知を行う「見守りロボット」などが挙げられます。これらのロボットを導入することで、介護職員の負担が軽減され、ケアの質が向上します。

AIを活用した介護記録システム
 介護職員は日々の業務の中で、多くの時間を介護記録の作成に費やしています。AIを活用した介護記録システムを導入することで、利用者のバイタルデータやケア内容を自動的に記録できるようになり、職員が記録作業に費やす時間を削減できます。これにより、介護職員は利用者とのコミュニケーションにより多くの時間を割くことができ、サービスの質向上につながります。

オンライン通所サービスの提供
 通所介護施設に通えない利用者に対して、オンラインで介護サービスを提供する取り組みも始まっています。ビデオ通話を通じて運動指導や健康相談を行うことで、利用者は自宅にいながらもケアを受けられる環境が整います。

介護職の魅力向上:給与の改善や働きやすい職場づくり

給与水準の向上とキャリアパスの構築
 介護職の給与水準は他の業種に比べて低いと言われており、この点が介護人材不足の一因となっています。
 厚生労働省のデータによれば、介護職員の平均月収は約28万円であり、他業種と比較すると約5~10万円ほど低いのが現状です。
 このため、介護職員の給与を改善することで、介護業界の魅力を高め、人材確保につなげることが必要です。

 さらに、介護職のキャリアパスを明確化することも重要です。例えば、「初任者研修→介護福祉士→ケアマネジャー」といったように、段階的にスキルアップできる制度を整えることで、従業員が長期的なキャリアを築けるようになります。
 こうしたキャリアパスを示すことで、若い世代が介護職に興味を持ち、長く働き続けることが期待できます。

働きやすい職場環境の整備
 介護業界の離職率が高い要因の一つは、労働環境の厳しさです。
 そのため、職場環境の改善を図ることが重要です。具体的には、介護職員が適度な休息を取れるようにシフト体制を見直したり、メンタルヘルスケアのサポートを行ったりすることで、働きやすい環境を整備することが求められます。

 また、テクノロジーを活用して業務効率化を図ることで、職員の負担を軽減することも重要です。
 例えば、介護記録のデジタル化や、ケアプランの自動生成システムの導入などによって、職員の業務負担を減らし、働きやすい職場づくりを推進することが求められます。

6. 2025年問題に向けて個人ができること

 2025年問題は、国全体や企業だけでなく、私たち一人ひとりにも関わる問題です。家族や自身が将来介護を必要とする状況に備え、今から準備を始めることが非常に重要です。このセクションでは、個人が2025年問題に向けて取り組むべき具体的な行動について、さらに詳細に解説します。

初任者研修や資格取得:介護の基本知識を学ぶ

初任者研修を受講するメリット
 介護の初任者研修は、介護の基礎を学ぶための入門的な資格であり、全くの未経験者でも受講できるカリキュラムが組まれています。
 この資格を取得することで、介護の基礎的な技術や知識を身につけることができます。例えば、介助の方法や認知症高齢者への対応、車いすの使い方、排泄や入浴のサポートなど、実際に介護の現場で必要とされるスキルを学ぶことができます。

 家族に介護が必要になった場合、初任者研修で学んだ知識や技術は非常に役立ちます。
 たとえば、認知症の方への接し方や日常生活での介助方法を知っていると、家族の負担が軽減され、介護される方も安心して生活できるようになります。
 初任者研修は通常、週末だけの講座や通信教育もありますので、働きながらでも取得が可能です。

さらに上位の資格を目指す
  介護の初任者研修だけでなく、より高度な知識や技術を身につけるために、上位の資格である「介護福祉士」や「ケアマネジャー」を目指すことも一つの方法です。
 介護福祉士の資格を取得すると、介護の専門職として働くことができ、介護現場でリーダーシップを発揮することが求められます。
 また、ケアマネジャーは、介護保険制度を理解し、利用者一人ひとりに最適なケアプランを作成する専門家であり、介護現場での重要な役割を担います。

資格取得後の活用方法
  資格を取得した後、家族や友人が介護を必要とする際に適切なアドバイスを提供したり、地域のボランティア活動に参加して経験を積んだりすることも可能です。
 資格を持っていることで、介護の現場で働くことに興味がない方でも、地域社会に貢献することができます。

副業・兼業の活用:介護業界に興味がある方へのアプローチ

副業としての介護の仕事を始める
  副業や兼業で介護の仕事を経験することで、介護の現場を実際に知ることができます。
 介護施設や訪問介護の現場で働くことはもちろん、地域のデイサービスや有料老人ホームなどでの短時間のアルバイトもあります。
 例えば、週末だけ介護の仕事をすることで、自分のスキルを磨くと同時に、介護現場の課題や利用者のニーズを肌で感じることができます。

 副業で介護の仕事を経験することで、将来、自分自身が介護を受ける立場になった際にも、どのようなサポートを求めればよいかを理解できるようになります。
 また、介護の現場で働くことで得た経験や知識は、家族の介護が必要になった際にも非常に役立ちます。

企業が副業・兼業をサポートする動き
 近年、政府が副業・兼業を推進する方針を打ち出しており、多くの企業が従業員に対して副業を許可する動きを見せています。
 企業によっては、介護業界での副業を奨励し、介護スキルを持った人材の育成をサポートする取り組みも増えています。
 例えば、従業員が副業として介護現場で働く場合、その経験を社内で共有する機会を設けたり、介護に関する社内勉強会を実施したりする企業もあります。

 副業を通じて介護業界に触れることで、他の業界で働く人々が介護の現場を理解し、将来的な人材確保や地域包括ケアシステムの推進に貢献することが期待されています。

地域でのボランティア活動:地域包括ケアへの参加

地域での介護ボランティア活動の重要性
 地域包括ケアシステムを支えるためには、地域住民の協力が欠かせません。
 その一つとして、介護ボランティア活動に参加することが挙げられます。ボランティア活動は、介護の知識や経験がなくても誰でも参加できるものが多く、高齢者との交流を通じて、介護への理解を深める良い機会となります。

 例えば、高齢者の自宅を訪問して話し相手になる「訪問ボランティア」や、買い物の代行や掃除などの「生活支援ボランティア」、介護施設でのレクリエーションの手伝いなど、多様な活動があります。
 こうした活動を通じて、高齢者のニーズや生活状況を知ることができ、地域全体で支え合う仕組みを作る一助となります。

ボランティア活動を通じたスキルアップ
  ボランティア活動に参加することで、介護に関する知識やスキルを身につけるだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決力も向上します。
 また、他のボランティアメンバーとの交流を通じて、新しい視点や知識を得ることができるため、自分自身の成長にもつながります。

地域でのネットワークを築くことの重要性
 地域でボランティア活動を行うことで、地域内の高齢者やその家族、他のボランティアメンバーとのつながりを築くことができます。
 これにより、地域全体で高齢者を支えるネットワークを形成し、孤立しがちな高齢者をサポートすることが可能となります。特に、災害時や緊急時には、このようなネットワークが大きな力となります。

 また、地域で築いたネットワークは、自分自身や家族が将来介護を受ける立場になった際に、適切な支援を受けるための頼りになる存在となります。地域全体で支え合う風土を作り上げることは、2025年問題に向けた大きな対策の一つです。

7. まとめ

 2025年問題は、日本社会全体に影響を及ぼす大きな課題です。しかし、企業や介護業界だけに任せるのではなく、私たち一人ひとりができることを積極的に取り組むことで、より良い介護環境を作り上げることが可能です。

 2025年問題による介護人材の不足や高齢者の増加は、家族や地域社会に直接影響を与えます。介護サービスの質を維持し、必要なサポートを提供するためには、介護に対する理解を深めたり、実際にサポートに携わる人を増やすことが不可欠です。
 自分自身や家族、そして地域全体が安心して暮らせる社会を実現するためには、個人の意識と行動が大切です。

 例えば、初任者研修を受けて介護の基礎知識を学ぶことで、家族の介護が必要になったときに適切に対応できるようになります。
 また、副業やボランティア活動を通じて介護現場を経験することで、介護の実態や課題を理解することができます。地域の高齢者との交流を深めることで、孤立を防ぎ、地域全体で支え合う風土を作ることも可能です。

 2025年問題は、誰もが直面する可能性のある課題です。しかし、私たち一人ひとりが積極的に知識を身につけ、行動を起こすことで、より良い介護の未来を築くことができます。今日からできることを始め、未来の安心につなげていきましょう。

参考文献 内閣府 令和2年版 高齢社会白書(全体版)

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