外国人介護人材の受け入れは、今や介護現場の人手不足対策として欠かせない選択肢になっています。
ただし、採用できたとしても、すぐに辞めてしまえば現場の負担は減りません。大切なのは、採用後の定着支援です。日本語教育、生活支援、定期面談、職場全体の理解づくり、そして将来につながるキャリア支援まで整えてこそ、外国人介護スタッフは安心して長く働けるようになります。
この記事では、外国人介護人材が定着しやすい職場に共通する考え方と、現場ですぐ実践できる支援のポイントを、介護職員の方にもわかりやすく整理して解説します。「採用できた」で終わらせず、「定着して活躍してもらう」ためのヒントとしてお役立てください。
なぜ外国人介護人材は定着支援が重要なのか

介護現場で外国人材の受け入れが進む背景
外国人介護人材の受け入れが進んでいる一番の理由は、介護現場の人手不足が今後さらに深刻になる見込みだからです。介護の仕事は、利用者の暮らしを毎日支える仕事です。そのため、必要な人数を確保できなければ、職員一人ひとりの負担が重くなり、現場全体が回りにくくなります。
こうした状況のなかで、外国人材は人手不足を補う存在としてだけでなく、これからの介護現場を一緒に支える仲間として期待されるようになっています。実際に、技能実習、特定技能、在留資格「介護」など、外国人が介護現場で働くための制度も整えられてきました。
つまり、外国人介護人材の受け入れは一時的な対策ではありません。介護現場をこれからも維持していくための、現実的で重要な人材確保策の一つになっているのです。

厚生労働省の将来推計では、2040年度には介護職員が約272万人必要とされています。
※介護業界の人手不足と若者離れについて詳しく知りたい方はこちら>>>https://asu-asu.blog/kaigo-hitodebusoku-shinsou/
採用できても定着しなければ意味がない理由
外国人介護人材は、採用できたこと自体がゴールではありません。大切なのは、安心して働き続けてもらい、現場で力を発揮できるようになることです。
介護の仕事では、利用者との信頼関係や、職員同士の連携がとても大切です。せっかく採用しても、短期間で辞めてしまえば、教育にかけた時間も、現場が支えた労力も、十分に実を結びません。さらに、新しい人が入るたびに教え直しが必要になり、かえって職場の負担が増えてしまいます。
だからこそ、外国人介護人材の採用は「何人採れたか」だけではなく、「何人が継続して働いているか」まで見て考える必要があります。採用だけで満足せず、定着まで見据えてはじめて、本当の意味で人材確保が成功したと言えます。



当施設では2024年度にミャンマーから4名の技能実習生を受け入れています。2026年度も同じくミャンマーから4名の受け入れを調整しています。
外国人介護スタッフが早期離職しやすい主な要因
外国人介護スタッフが早期離職しやすい主な要因は、一つではありません。言葉の不安、仕事の難しさ、文化や価値観の違い、生活面の困りごと、人間関係の不安など、いくつもの要素が重なって離職につながることが多いです。
特に多いのが、「わからないことを聞けないまま抱え込んでしまうこと」です。介護現場では専門用語や略語も多く、日本人同士なら通じるあいまいな表現も少なくありません。そのため、仕事そのものよりも「何を言われているのかが分かりにくい」「どう質問すればよいか分からない」と感じてしまうことがあります。
また、仕事のことだけでなく、住まい、買い物、通勤、病院、役所の手続きなど、日本での生活そのものに慣れるまでに負担がかかります。こうした不安が積み重なると、「ここでは続けられないかもしれない」と感じやすくなります。
そのため、外国人介護人材の離職防止では、本人の努力だけに任せるのではなく、職場側が言葉・仕事・生活の面から支えることが大切です。
外国人介護人材が辞めない職場に共通する支援


日本語教育は“入職前”より“入職後”が重要
外国人介護人材の定着を考えるうえで、日本語教育は入職前だけで終わらせてはいけません。むしろ重要なのは、働き始めてからの日本語支援です。
なぜなら、実際に困りやすいのは、教科書の日本語ではなく、現場で使う日本語だからです。申し送り、記録、利用者への声かけ、職員同士のやり取りなどは、教室で学ぶ日本語とは少し違います。たとえ日本語能力試験に合格していても、介護現場特有の言い回しに戸惑うことは少なくありません。
そのため、入職後は、やさしい日本語で説明する、よく使う言葉を一覧にする、写真付きマニュアルを用意する、分からない言葉をその場で確認できるようにするといった工夫が必要です。
日本語教育は採用前の条件ではなく、採用後に職場が一緒に育てていくものと考えることが、定着につながります。
文化・価値観の違いを前提にした関わり方
外国人介護人材の定着には、文化や価値観の違いを前提にして関わることが大切です。日本の職場では、「言わなくても分かるだろう」「空気を読んで動いてほしい」と考えてしまう場面がありますが、文化背景が違えば、その前提は通じないことがあります。
たとえば、指示が遠回しだと意味が伝わりにくいことがありますし、日本人には当たり前のマナーや習慣でも、外国人には最初から分かるとは限りません。ここで「なぜ分からないのか」と責めるのではなく、「どうすれば伝わるか」を考えることが大切です。
具体的には、短い言葉で、はっきり伝えること。大事なことは繰り返すこと。理解できたかを確認すること。質問しやすい空気をつくること。こうした基本を徹底するだけでも、誤解はかなり減ります。
文化の違いは問題ではなく、支援の前提です。その考え方を職場全体で持てるかどうかが、定着のしやすさを左右します。



こちらの伝えていることが理解できないまま「はい」と返事をされることもあります。曖昧な場合は、逆質問をして本当に理解されているか確認をしています。
生活面の支援が仕事の安定につながる理由
外国人介護人材が長く働くためには、仕事の支援だけでなく、生活面の支援も欠かせません。生活が不安定だと、仕事に集中しにくくなるからです。
たとえば、住まいに困っている、病院の受診方法が分からない、買い物や通勤に不安がある、役所の手続きが難しいといった悩みは、仕事とは別のようでいて、実際には大きく影響します。生活の不安が強いと、遅刻や欠勤、表情の変化、仕事への集中力低下にもつながりやすくなります。
反対に、暮らしの基盤が整うと、本人は安心して仕事に向き合えるようになります。相談できる人がいる、困ったときに助けてもらえる、日常生活のルールが分かる、という安心感は、職場への信頼にもつながります。
つまり、生活支援は仕事と切り離されたものではありません。安心して暮らせることが、安心して働けることにつながるのです。



当施設でも初回の病院受診や役所での手続きなどは同行支援を行なっています。近隣住人にも挨拶を行い、何かあれば施設に連絡をいただくようにお願いをしています。
指導担当者を孤立させない体制づくり
外国人介護人材の定着支援では、本人への支援ばかりに目が向きがちですが、実は指導担当者を孤立させないこともとても重要です。
一人の担当者に、業務指導、日本語の説明、面談、生活相談まで集中すると、負担が大きくなり、支援が続かなくなります。教える側が疲れてしまえば、結果として本人の定着にも悪い影響が出ます。
そのため、現場では役割分担を明確にしておくことが大切です。仕事の指導をする人、生活面をフォローする人、面談内容を管理する人など、複数で支える形にすると、無理なく継続しやすくなります。また、写真付きマニュアルや用語集を整備しておけば、教える負担も減らせます。
良い支援は、熱心な一人が頑張る仕組みではなく、チームで支える仕組みから生まれます。



当施設では、実習指導者、生活指導員、月1回の面談対応、事業所内、法人事業所間の情報共有連絡会議など、負担が個人に偏らないように役割分担をして対応しています。
定着率を高める教育・面談・職場づくりの実務


定着率を高めるオンボーディングの進め方
外国人介護人材の定着率を高めたいなら、入職直後のオンボーディングを丁寧に行うことが大切です。最初の時期に「この職場ならやっていけそう」と感じられるかどうかで、その後の定着は大きく変わります。
介護の仕事は覚えることが多く、日本での生活も同時に始まるため、入職したばかりの外国人職員は非常に多くの情報を抱えています。その状態で十分な説明もなく現場に入ると、不安が強くなり、「思っていたのと違う」と感じやすくなります。
そのため、最初の1か月ほどは、段階的に慣れていけるようにするのが理想です。1週目は施設案内や勤務ルール、2週目は見学と簡単な補助業務、3週目以降に少しずつ担当範囲を広げ、節目ごとに振り返り面談を行う流れにすると、本人も安心しやすくなります。
最初に丁寧に迎え入れることが、その後の定着の土台になります。
伝わる教え方と、つまずきやすい介護用語の支援
外国人介護人材への教育では、「正しく教えること」だけでなく、「伝わるように教えること」が大切です。日本人同士なら何気なく使っている言葉でも、外国人職員には分かりにくいことがあります。
介護現場には、「離床」「更衣」「陰洗」「トロミ」「申し送り」など、日常ではあまり使わない言葉が多くあります。さらに、「ちょっと見ておいて」「いい感じにやっておいて」といったあいまいな表現は、誤解の原因になります。
そのため、教えるときは、短い文で、順番に、具体的に伝えることが大切です。たとえば、「車いすのブレーキを確認します」「足台を上げます」「利用者さんに声をかけます」のように、行動を一つずつ分けて説明すると理解しやすくなります。また、介護用語をやさしい日本語でまとめた一覧表を作っておくと、現場で役立ちます。
伝わらないのは能力の問題ではなく、教え方の問題かもしれないという視点を持つことが、支援の質を高めます。
定期面談で確認すべきポイント
外国人介護人材の定着率を上げるには、定期面談が欠かせません。問題が大きくなってから話を聞くのでは遅く、小さな不安の段階で気づいて支えることが大切です。
外国人職員の中には、困っていても自分から言い出しにくい人がいます。日本語に自信がない、上司に遠慮してしまう、迷惑をかけたくないと感じるなど、理由はさまざまです。そのため、職場側が意図的に面談の場をつくる必要があります。
面談では、「仕事で分からないことはないか」「職場で相談できる人はいるか」「生活で困っていることはないか」「日本語学習は進んでいるか」「今後どんな働き方をしたいか」といった点を確認すると実用的です。大切なのは、評価するだけで終わらず、相談を受け止めて支援につなげることです。
定期面談は管理のためではなく、離職を防ぐための対話と考えることが重要です。



管理団体の定期面談で悩みや困り事の共有をしています。実習生同士のトラブルなどは母国語でヒアリングしていただくこともありました。管理団体との協力は欠かせません。
日本人職員・利用者・家族への説明と理解づくり
外国人介護人材の定着を考えるなら、支援の対象を本人だけに絞ってはいけません。日本人職員、利用者、家族にも、受け入れの目的や関わり方をきちんと伝えることが大切です。
職場全体の理解がないまま受け入れると、「教えるのが大変そう」「本当に大丈夫なのか」といった不安や不満が生まれやすくなります。また、利用者や家族も、十分な説明がないと、言葉の面や介護の質に不安を持つことがあります。
そのため、受け入れ前や受け入れ直後に、日本人職員向けには教え方や関わり方を共有し、利用者・家族には教育体制や安全面への配慮をわかりやすく伝えることが大切です。そうすることで、外国人職員本人も「職場全体に受け入れてもらえている」と感じやすくなります。
外国人介護人材の定着は、本人だけの努力ではなく、周囲の理解づくりで支えるものです。



当施設でも受け入れ前に施設内研修や入居者、ご家族への説明等、丁寧に行いました。当初こそ職員から戸惑いの声も多く聞かれましたが、今ではそのようなネガティブな発言は一切ありません。
長く働いてもらうためのキャリア支援


将来不安を減らすキャリアパスの示し方
外国人介護人材に長く働いてもらうには、今の仕事だけでなく、その先の将来が見えることが大切です。将来が見えないと、人は不安になります。
特に外国人職員は、仕事だけでなく、在留資格、日本語学習、資格取得なども関わってくるため、日本人職員以上に将来の見通しが重要です。「ここで頑張るとどうなれるのか」「何年後にどんな仕事を任されるのか」が分かるだけでも、安心感は大きく変わります。
そのため、施設側は、1年目は基本業務の習得、2年目は記録や夜勤の安定、3年目以降は実務者研修や介護福祉士の受験準備、といった形で、段階的なキャリアの道筋を見せることが効果的です。
将来が見える職場ほど、人は「ここで頑張ろう」と思いやすいものです。



定着に一番効くのは住まいと待遇になります。住まいは一人暮らしができるか、待遇はキャリアパスでどのように昇給するか、これらを可視化するのが良いと言われています。
介護福祉士資格取得支援が定着に効く理由
外国人介護人材の定着支援では、介護福祉士資格の取得支援がとても重要です。資格取得は、本人の成長だけでなく、将来の安定にもつながるからです。
介護福祉士の資格を取ると、仕事への自信が高まり、任される役割も広がります。また、将来日本で長く働きたいと考えている人にとっては、資格取得が大きな目標になります。目指す先があることで、日々の学びや努力にも意味を感じやすくなります。
施設側としては、勤務調整、勉強会、用語学習、受験料や研修費の補助など、少しずつでも支援を行うと効果的です。資格取得を本人任せにせず、職場として応援する姿勢を示すことが大切です。
資格取得支援は福利厚生ではなく、定着と成長を後押しする投資です。
“ただ働いてもらう”から“育ってもらう”への発想転換
外国人介護人材の定着を本気で考えるなら、「人手不足を埋めるために働いてもらう」という考え方から、「将来の中核人材として育ってもらう」という考え方に変える必要があります。
短期的な穴埋めとして見てしまうと、教育も支援も最低限になりやすく、本人も「大事にされていない」と感じやすくなります。反対に、育成を前提に受け入れると、本人も職場も長い目で成長しやすくなります。
たとえば、最初から即戦力を求めるのではなく、「半年後にはここまで」「1年後にはここを目指す」と段階的な目標を示すことで、本人も無理なく成長できます。さらに、成長した人が後輩の相談役やメンターになれば、職場全体にも良い循環が生まれます。
外国人介護人材は“今の穴を埋める人”ではなく、“未来を支える人材”として育てる視点が重要です。
まとめ|外国人介護人材の定着支援は採用後から始まる
外国人介護人材の受け入れで本当に大切なのは、採用が決まった瞬間ではなく、働き始めてからどう支えるかです。採用しただけで人手不足が解決するわけではありません。教育、生活支援、面談、資格取得支援、職場全体の理解づくりまで含めて取り組んで、はじめて「定着」につながります。
介護の仕事は、利用者との信頼関係、継続したケア、職員同士の連携が必要な仕事です。短期間で辞めてしまう状況を防ぐためには、本人の努力だけではなく、職場側の受け入れ準備と支援の質が重要になります。
つまり、外国人介護人材の定着支援は「採用後のおまけ」ではありません。これからの介護現場を守るための、重要な経営課題であり、現場づくりそのものです。
離職防止の鍵は教育・支援・対話
外国人介護人材の離職を防ぐために大切なのは、教育・支援・対話を続けることです。どれか一つだけでは足りません。
日本語教育だけしても、生活面で不安があれば仕事に集中しにくくなります。生活支援だけしても、仕事の教え方が分かりにくければ自信をなくします。面談だけしても、実際の支援につながらなければ信頼は生まれません。
だからこそ、教育・生活支援・定期面談をセットで考え、本人の不安を早めに受け止めることが大切です。安心して相談できる職場は、それだけで離職しにくくなります。
離職防止の鍵は、特別な制度よりも、基本的な支援を丁寧に続けることです。



ただやりすぎてしまうと継続できなくなります。職員に無理なく継続できるサポートをすることが鍵です。
定着する施設は受け入れ準備が違う
外国人介護人材が定着する施設には共通点があります。それは、採用後に慌てるのではなく、受け入れ前から準備を整えていることです。
勤務ルール、教育体制、相談相手、日本語支援、生活支援、職員への周知、利用者・家族への説明など、あらかじめ準備しておくことで、入職後の混乱を減らすことができます。反対に、準備不足のまま現場に入ると、本人も職場も不安が大きくなります。
受け入れがうまくいく施設は、偶然うまくいっているわけではありません。見えないところで準備をしているからこそ、現場が安定しているのです。
定着する施設は、採用活動よりも“受け入れ設計”に力を入れていると言えます。
外国人材の定着は介護現場の未来を支える
外国人介護人材の定着は、目の前の人手不足を補うだけでなく、これからの介護現場の未来を支える取り組みです。
長く働き続けることで、日本語力も介護技術も高まり、利用者との信頼関係も深まります。さらに、資格取得や後輩指導へと成長していけば、現場を支える大きな力になります。
また、外国人職員が働きやすい職場は、日本人職員にとっても働きやすい職場になりやすいです。教え方をわかりやすくすること、面談を行うこと、相談しやすい雰囲気をつくることは、すべての職員にとってプラスになります。
外国人介護人材の定着支援は、外国人だけのためのものではなく、介護現場全体を強くする取り組みです。



今の技能実習生達が、今年度入職予定の新たな実習生のメンターとして活躍してくれることを期待しています。
※2027年度施行、育成就労制度について詳しく知りたい方はこちら>>>https://asu-asu.blog/ikuseisyuurou-kaigo-saishingaide/

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