高齢者の頻尿と介護の対応完全ガイド|原因・治し方・夜間頻尿対策で本人も介護者もラクになる方法

高齢者の頻尿と介護の対応完全ガイドのサムネイル画像

高齢になると「トイレが近い」「夜中に何度も起きる」といった頻尿の悩みが増えてきます。これはご本人にとってもつらい症状であり、同時に家族や介護職にとっても夜間の付き添い・おむつ交換・コール対応など大きな負担になります。

しかし、頻尿や夜間頻尿は、単なる「老化」だけではなく、膀胱や前立腺の病気、生活習慣病、認知症、薬の副作用など、治療や調整で改善できる原因が隠れていることも少なくありません。

この記事では、介護に関わる方に向けて、頻尿の基礎知識から原因、受診の目安、在宅・施設での具体的な対応、トレーニングや薬のポイントまでを整理します。

この記事でわかること

  • 「トイレが近い」「尿の回数が多い」と言える頻尿の目安
  • 高齢者の頻尿・夜間頻尿を起こす主な原因(病気・認知症・薬・生活習慣)
  • 病院に行くべきサインと、受診までに準備しておくこと
  • 介護現場・在宅介護でできる観察と「排尿日誌」のつけ方
  • 夜間のトイレ・おむつ交換の負担を減らす具体的な工夫
  • 膀胱トレーニングや骨盤底筋体操など、頻尿改善のための運動療法
  • 頻尿の薬・市販薬・サプリを使うときの注意点
  • 介護職が押さえたい、尊厳を守る頻尿ケアのポイント

頻尿ケアの目的は、単に回数を減らすことではなく、本人の安心と介護負担の軽減を両立することです。順番に見ていきましょう。


目次

頻尿とは?「トイレが近い」「排尿回数が多い」の目安

利用者と介護職員の写真

頻尿の定義と正常な排尿回数

一般的には、日中の排尿が1日8回以上、あるいは夜間に1回以上起きてトイレに行く状態を「頻尿」と呼ぶことが多いとされています。もちろん個人差はありますが、「以前より明らかに回数が増えた」「生活に支障が出ている」場合は、頻尿として対応を考えてよい状態です。

健康な成人では、1日の排尿回数はおおよそ4〜7回程度が目安とされています。夜間は多くても0〜1回程度で、2回以上起きてしまう状態が長く続くと「夜間頻尿」として扱われます。

大切なのは、回数だけでなく、「本人が困っているかどうか」です。「回数は多いが、生活に支障がない」のであれば経過観察でよい場合もありますが、「睡眠不足」「外出の制限」「転倒リスクの増加」など、生活の質を下げている場合は、早めに原因を探して対策していくことが重要です。

「午前中だけトイレが近い」「1時間に1回トイレ」は頻尿?

「午前中だけトイレが近い」「朝だけ何度も行きたくなる」といった相談もよく聞きます。この場合、夜間の水分摂取量や、朝飲んでいる薬(利尿薬など)、朝の活動量の少なさなどが関係していることがあります。

また、1時間に1回以上トイレに行く状態が続くと、多くの人にとって生活の支障が大きい頻尿と考えてよいでしょう。ただし、単発の1日だけで判断するのではなく、数日〜1週間ほどのパターンを見て判断することが大切です。

「朝だけ」「午前中だけ」など時間帯に偏りがある場合、水分を飲むタイミング・薬を飲む時間・活動量の違いなどを一緒に見直していくと原因が見つけやすくなります。

「小便が近い」「尿意が近い」ときにチェックしたいポイント

「小便が近い」「尿意が近い」と感じたときは、次のようなポイントを観察しておくと、病院に相談するときにも役立ちます。

回数:1日何回くらいか、夜間は何回くらいか

:1回あたりの量は多いのか少ないのか(ちょろっとだけか、しっかり出ているか)

痛み:排尿時にしみる・痛い・熱い感じはないか

漏れ:トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがあるか

残尿感:出し切った感じがせず、まだ残っているような感じがするか

見た目やにおい:濁り・血尿・においの変化がないか

これらをメモしておくと、医師は膀胱や前立腺の病気なのか、感染症なのか、生活習慣の影響なのかを推測しやすくなります。介護者としても、「なんとなく多い気がする」ではなく、数字や具体的な様子で伝えることが大切です。


高齢者の頻尿・夜間頻尿の主な原因|病気と生活習慣を整理

高齢夫婦がランニングしている写真

よくある5つの原因

高齢者の頻尿には、いくつか代表的な原因があります。ここでは、介護現場でよく遭遇する5つのパターンを整理します。

過活動膀胱:膀胱が敏感になり、尿がたまる前に「行きたい」と強く感じてしまう状態です。「急にガマンできない尿意」「間に合わずに漏れてしまう」などが特徴です。

前立腺肥大(男性):前立腺が大きくなって尿道を圧迫し、「出にくいのに回数が多い」「残尿感が強い」といった症状が出ます。40〜50代以降の男性に多くみられます。

膀胱炎・尿道炎などの感染症:排尿時の痛み・違和感・残尿感・血尿などを伴うことが多く、急に頻尿がひどくなった場合には必ず疑うべき原因です。

生活習慣病や腎・心疾患:糖尿病・心不全・腎臓病などは、尿の量や回数に影響します。特に心不全では、昼間に足などにたまった水分が夜に戻ってきて、夜間頻尿の原因になることがあります。

加齢・ホルモン変化・骨盤底筋の衰え:年齢とともに膀胱や尿道を支える筋肉が弱ったり、女性では女性ホルモンの低下により尿道まわりの粘膜が弱くなったりして、頻尿や尿漏れが起こりやすくなります。

多くの場合、原因はこれらの「組み合わせ」です。例えば「前立腺肥大+過活動膀胱」「加齢による筋力低下+心不全」「糖尿病+感染症」といった形で複数が重なり、症状が強くなっているケースが少なくありません。

「水分を取っていないのに尿の量が多い」「水飲むとすぐ出る」のはなぜ?

「水分をあまり取っていないのに尿の量が多い」「水を飲むとすぐトイレに行きたくなる」という訴えもよく聞きます。これにはいくつかの理由が考えられます。

  • 糖尿病などで体が余分な糖を尿と一緒に出そうとしている場合
  • カフェイン・アルコール・利尿作用のある薬(利尿薬など)で尿を作る量が増えている場合
  • 「すぐ行かないと不安」という気持ちから、膀胱にあまりためずに少量でもすぐトイレに行く習慣になっている場合

特に高齢者では、利尿薬や睡眠薬、血圧の薬など、複数の薬が関係していることが多くあります。「何時ごろ、どの薬を飲んでいるのか」「そのあとどれくらいトイレが近くなるのか」を観察しておくと原因を探るヒントになります。

女性の頻尿の原因|40代・50代以降に多い背景

女性の場合、40〜50代以降の更年期・閉経を境に頻尿や尿漏れが増えやすくなります。女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、尿道まわりの粘膜が薄くなり、膀胱や尿道を支える骨盤底筋が弱りやすくなるためです。

また、出産回数が多い方や、重いものを持つ仕事を長年続けてきた方では、骨盤底筋への負担が大きく、頻尿・尿失禁が起こりやすいことが知られています。「朝だけ頻尿」「咳やくしゃみで漏れる」といった訴えがある場合、骨盤底筋のトレーニングや生活習慣の見直しが有効なことが多いです。

男性の頻尿の原因|30代〜高齢男性で注意したい病気

男性では、30代以降から前立腺肥大が少しずつ増え、50歳を超えるころには多くの男性が程度の差はあれ前立腺の変化を抱えると言われています。「トイレが近い 原因 男性」「頻尿 原因 男性 40代」といったキーワードでよく検索されるのはこのためです。

注意したいのは、前立腺肥大だけでなく、前立腺がんなど別の病気が隠れている場合です。排尿の勢いが極端に弱い、血尿が出る、骨の痛みを伴うなどの症状があるときは、早めの受診が必要です。

介護現場では、「残尿感が強い」「起床時に何度もトイレを繰り返す」といった訴えが続いた場合、泌尿器科への受診を勧めることが大切です。


認知症でトイレばかり行くのはなぜ?頻尿×認知症の仕組みとリスク

車椅子に乗っている高齢男性の写真

認知症の方に頻尿・トイレコールが多い3つの主な理由

認知症の方に「さっき行ったばかりなのに、またトイレ」「トイレコールが止まらない」という状況は珍しくありません。その背景には、主に次の3つの理由があります。

加齢や疾患による「本当の頻尿」:過活動膀胱、前立腺肥大、膀胱炎、糖尿病など、身体の病気として頻尿が起きているケースです。

見当識障害・記憶障害による「さっき行ったのを忘れる」:トイレに行った事実をすぐ忘れてしまい、「トイレに行ったかどうか不安になる」ため、繰り返し訴えるケースです。

認知症治療薬などの副作用:一部の薬には、尿の出方や血圧、意識状態に影響を与えるものがあります。薬が増えたタイミングと頻尿が重なっていないか確認することが大切です。

つまり、「認知症だから仕方ない」だけではなく、身体の病気+認知症の症状+薬の影響が重なっていることが多いと理解しておく必要があります。

認知症でトイレばかり行くことによるリスク

認知症でトイレの訴えが増えると、次のようなリスクが高まります。

  • 夜間の転倒・骨折リスク:暗い中で不安な気持ちのまま歩き、段差やコードに足を取られる危険があります。
  • 本人の睡眠不足・不安の増加:何度も起きることで睡眠が浅くなり、日中の不穏や昼夜逆転につながりやすくなります。
  • 介護者の睡眠不足・精神的ストレス:夜間対応が続くことで、家族や職員の疲労とストレスが蓄積し、介護うつや離職の原因になるおそれがあります。

これらのリスクを減らすには、「どうすればトイレに行く回数をゼロにできるか」ではなく、「どうすれば安全に・安心してトイレに関われるか」という視点が重要です。

認知症の方への頻尿対応の基本姿勢

認知症の方に対して、「行きすぎだからガマンして」は基本的にNGです。ガマンを強いると、不安や怒りが強くなり、かえって不穏・興奮・問題行動が増えることがあります。

対応のポイントは次の3つです。

まずは気持ちを受け止める:「トイレが心配なんですね」「不安なんですね」と、感情に寄り添う言葉をかける。

否定しすぎない:「さっき行きましたよ」と事実だけを繰り返すのではなく、「一緒に確認しましょうか」と安心につながる言葉を添える。

環境とパターンで支える:トイレの場所が分かりやすい表示、夜間の足元照明、一定間隔での声かけやトイレ誘導などを組み合わせる。

「事実を正す」よりも、「不安を減らす」「安全を守る」ことを優先した関わりが、本人の安心と介護者のストレス軽減につながります。

排泄の訴えは我慢できない生理現象ではありますが、5分おきに訴えが続くと「さっきも行きましたよ」と言ってしまう気持ちよく分かります。原因を探り、チームで対策を考えましょう。

※ 認知症ケアについて詳しく知りたい方はこちら>>>https://asu-asu.blog/ninntisyoucare-yumanityudo/


「トイレが近いのは病気?」受診の目安とチェックリスト

チェックリストの画像

すぐ病院に行くべきサイン

頻尿があっても、すぐに病院に行くべきパターンと、数日観察してから相談すればよいパターンがあります。次のようなサインがある場合は、早めの受診が必要です。

  • 発熱:38度前後の熱と頻尿・排尿時の痛みがある場合、膀胱炎・腎盂腎炎などの感染症を疑います。
  • 血尿:赤い尿・茶色い尿が出る場合、尿路結石・腫瘍・感染などの可能性があり要注意です。
  • 強い痛み:排尿時の激しい痛みや下腹部の痛みが続く場合は、早めの受診が望まれます。
  • 急に頻尿になった:数日の間に急に回数が増えた場合は、感染や薬の影響などを確認する必要があります。
  • 尿が出にくい・出ない:前立腺肥大などによる尿閉の可能性があり、緊急対応が必要なこともあります。

泌尿器科・内科・婦人科など、どこを受診すべきか

受診先に迷うことも多いですが、基本的な目安は次のようになります。

高齢男性:前立腺肥大・前立腺がんなどが心配な場合は泌尿器科が第一候補です。内科しか近くにない場合は、まず内科で相談して紹介状を書いてもらう方法もあります。

高齢女性:膀胱炎・過活動膀胱・骨盤底の問題などは泌尿器科または婦人科で相談できます。どちらか迷う場合は、まず内科で相談し、必要に応じて専門科に紹介してもらうと安心です。

若年者:急な頻尿や排尿時の痛みがある場合は、まず内科で尿検査を受けるケースが多いです。専門的な検査が必要になったら、泌尿器科に紹介となります。

どの科に行くにしても、排尿の回数・量・夜間の回数・飲んでいる薬を整理しておくと、診察がスムーズになります。

受診前に整理しておくと役立つ情報

受診前に、次のような情報をメモしておくと、短い診察時間でも必要な情報を効率よく伝えられます。

1日の排尿回数(日中・夜間)

1回あたりの量のイメージ(少量・中くらい・多い)

症状が始まった時期・きっかけ(いつから・何か変わったことがあったか)

痛みや血尿の有無

飲んでいる薬(お薬手帳があれば持参)

持病(心臓病・腎臓病・糖尿病など)

これらをあらかじめ整理しておくことが、原因の見極めと適切な治療につながります。


介護現場でできる観察と「排尿日誌」|原因とパターンを見極める

虫眼鏡の写真

頻尿の原因把握に役立つ「排尿日誌」のつけ方

頻尿の原因を見極めるうえで、排尿日誌(排尿記録)はとても役立ちます。医療現場でも、過活動膀胱や夜間頻尿の評価に広く使われています。

基本的には、次の項目を記録します。

時刻:トイレに行った時間

場所:トイレ・ポータブルトイレ・おむつなど

回数:1日に何回か

:おおよその量(少・中・多でOK)

失禁の有無:間に合わず漏れたかどうか

水分量:飲んだ水分の種類と量(大まかでOK)

表形式にしておくと、医師や看護師、ケアマネージャーとも共有しやすくなります。

「午前中 頻尿」「夜間だけ頻尿」などパターンからわかること

排尿日誌をつけると、「午前中に集中している」「夜間だけ回数が多い」など、時間帯のパターンが見えてきます。

午前中に多い:朝の利尿薬の影響、朝だけ水分を多く飲んでいる、朝は不安が強いなどの要因が考えられます。

夜間だけ多い:心不全による体液の移動、就寝前の水分・アルコール摂取、日中の活動不足などが関係していることがあります。

1回の量が極端に少ない:膀胱が十分に膨らむ前にトイレに行く「習慣」になっている可能性や、感染症・過活動膀胱の影響が考えられます。

このように、「いつ・どれくらい・どんな状況で」を記録することで、対策も具体的に立てやすくなります。

施設・在宅で記録を共有し、医師・ケアマネに伝えるコツ

排尿日誌は、書いて終わりではなく、チームで共有することが重要です。

  • 在宅介護では、家族がつけた記録を訪問看護師・主治医・ケアマネジャーに共有する。
  • 施設では、日誌をカンファレンスや医師回診の資料として活用する。
  • 「多い/少ない」だけでなく、転倒や不安・不眠との関係も合わせて伝える。

こうすることで、薬の調整や生活指導、福祉用具の導入など、より具体的な支援につながりやすくなります。


在宅介護での頻尿対応|夜中のトイレ・おむつ交換の負担を減らす工夫

車椅子の利用者と家族の写真

高齢者が夜中に何度もトイレに行く理由と家族の困りごと

在宅介護では、「夜中のトイレ付き添い」「おむつ交換」が大きな負担になります。家族介護者を対象にした調査でも、夜間の排泄介助で寝不足になっている人は約半数と報告されています。

高齢者が夜中に何度もトイレに行く理由としては、

過活動膀胱や前立腺肥大などによる本当の夜間頻尿

心不全・腎臓病・糖尿病などによる尿量の増加

認知症による見当識障害(昼夜が分からない)

不安・さびしさからトイレをきっかけに人を呼ぶ

家族側の困りごととしては、

睡眠不足・疲労

転倒させてしまう不安

においや汚れへのストレス

などが重なり、介護を続ける気力が削られていきます。夜間の頻尿対策は、本人と家族の双方の健康を守るためのテーマです。

夜間の排泄介助・おむつ交換の負担を減らす具体策

夜間の負担を軽くするには、「トイレに行く回数をゼロにする」ではなく、「安全に・少ない労力で対応できる仕組み」を作ることが大切です。

ポータブルトイレの活用:ベッドの近くに置くことで、移動距離を短くし、転倒リスクと付き添いの負担を減らします。

夜用の大人用紙おむつ・尿とりパッドの選び方:吸収力が高い製品を選び、サイズや当て方を工夫することで、漏れを減らし、交換回数も減らせます。

ベッド周りの環境整備:段差解消・床の片づけ・足元照明などで、夜間に起きるときの安全性を高めます。

これらを組み合わせることで、「毎回トイレまで付き添う」状態から、「安全を確保しつつ回数を減らす」方向へシフトできます。

当施設でもオムツメーカーの見直しで排泄交換回数の削減を試みました。利用者には睡眠時間の確保、職員には業務負担の軽減と双方にとって成果がみられました。

介護者の睡眠を守るためにできること

介護者が限界まで頑張り続けると、心身の不調や介護うつにつながるおそれがあります。夜間の負担が大きい場合は、介護保険サービスの活用も積極的に検討しましょう。

ショートステイ:ときどき数日預けることで、家族がまとめて睡眠を確保できます。

夜間対応型訪問介護・訪問看護:地域によっては夜間の見守りや排泄介助をサポートしてくれるサービスがあります。

ケアマネジャーへの相談:夜間の負担が大きいことを伝え、ケアプランの見直しをお願いしましょう。

「自分だけで何とかしなければ」という考えを手放し、サービスや専門職を上手に頼ることが、長く介護を続けるためのコツです。


施設介護で頻尿のご利用者が多いときの対応|コール集中を防ぐ工夫

車椅子の利用者と職員の写真

「頻尿のご利用者様が多く、対応が間に合わない」現場で起きていること

特養やグループホーム、老健などの施設では、「頻尿のご利用者が多く、ナースコールが鳴り止まない」という状況が起きやすくなります。これは、ご本人の不安・職員の人数・建物の構造など、さまざまな要素が絡んでいます。

現場では、

特定の時間帯(起床前後・就寝前・消灯後)にコールが集中する

車椅子の方と歩行可能な方の動線が整理されていない

「すぐ対応してほしい」方と、「待てる」方の区別が共有されていない

といった問題が重なり、「誰も悪くないのに、みんながつらい」状態になってしまいます。

コールが集中する時間帯・パターンの分析

まずは、コールの集中する時間帯や内容をデータとして把握することが大切です。

  • どの時間帯に、何回ぐらいコールが鳴っているか
  • トイレ関連のコールが何割くらいか
  • どの居室からのコールが多いか

こうした情報をもとに、

起床前後・就寝前のトイレ一斉声かけのタイミングを見直す

車椅子でトイレ誘導する方と、立位保持できる方のトイレの位置や優先順位を整理する

スタッフの配置やラウンドの時間を、コールのピークに合わせて調整する

といった対策につなげることができます。

頻尿の方へのトイレ誘導・声かけの工夫

頻尿の方には、「リハビリを兼ねたトイレ誘導」という伝え方が効果的なことがあります。

「歩く練習も兼ねて、トイレに行きましょうか」

「足腰を保つために、1日◯回はトイレに行くようにしましょう」

といった声かけにより、ご本人の「できている感」を維持しながら、意味のある移動として位置づけることができます。

また、ポータブルトイレ・おむつ・尿量センサー・排泄予測支援機器を組み合わせることで、

  • どうしてもトイレまで間に合わない方
  • 夜間の起床が危険な方

などを見極め、「全員をトイレに連れていく」状況から「その人に合った方法を選ぶ」状況へとシフトできます。

職員の負担を減らしつつ「尊厳ある排泄ケア」を両立するポイント

職員の負担を減らすことと、利用者の尊厳を守ることは、両立が難しいように見えて、実は同じ方向を向いた目標です。なぜなら、

  • 安全で転倒の少ない動線
  • 適切な用具の活用
  • 時間帯ごとの計画的な誘導

は、職員の体力・時間を守るだけでなく、利用者にとっても「安心して排泄できる環境」になるからです。

「人数が足りないから仕方ない」と諦めるのではなく、ケア方法・環境・福祉用具・ICT機器の活用を組み合わせて、「みんなが少し楽になる」状態を目指していくことが重要です。

※ 生産性向上の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら>>>https://asu-asu.blog/seisanseikojujou-tetteikaisetu/


夜間頻尿の具体的対策|今日からできる生活習慣の見直し

屋外でストレッチする老夫婦の写真

水分摂取と飲み物の見直し

夜間頻尿の対策として、まず見直したいのが水分の摂り方と飲み物の種類です。水分を極端に減らすのではなく、

日中に十分な水分をとる(脱水予防)

就寝前2〜3時間の多量飲水を控える

アルコール・カフェインを夜は減らす(利尿作用・睡眠の質の低下を防ぐ)

といった工夫が効果的です。水分不足は、便秘・尿路感染症・血栓症など別のリスクを高めるため、「減らす」より「時間をずらす」意識が大切です。

日中活動量アップ・ふくらはぎ運動・ストレッチ

日中の活動量が少ないと、体の中の水分が足にたまりやすく、夜に心臓に戻ってきて尿量が増えると言われています。そのため、

日中の散歩や体操

ふくらはぎの筋ポンプを意識した運動(つま先立ち・かかと上げなど)

ふくらはぎサポーターや軽いマッサージ

が、夜間頻尿の改善に役立つ場合があります。これらは血行促進・むくみ軽減にもつながるため、転倒予防や冷え対策にもプラスになります。

夜間頻尿対策としての環境づくり

夜間頻尿では、「何回行くか」だけでなく、「どう行くか」がとても重要です。転倒を防ぎ、安心してトイレに行ける環境を整えましょう。

  • ベッドからトイレまでの安全確保:段差の解消・コードやマットの片づけ・滑りにくいスリッパの選択など。
  • 照明:真っ暗だと不安や転倒リスクが高まるため、足元灯や人感センサーライトなどで「明るすぎず・暗すぎない」環境を作る。
  • トイレのわかりやすさ:認知症の方には、トイレマーク・写真・色分けなどの視覚的な手がかりが有効です。

環境整備は、一度整えると長く効果が続く「投資型の対策」です。福祉用具専門相談員やリハビリ専門職とも相談しながら、安全で安心できる動線を一緒に考えていきましょう。


頻尿改善に役立つトレーニング・運動療法|膀胱トレーニングと骨盤底筋体操

平行棒で歩行練習する利用者と職員2名の写真

「頻尿は我慢すれば治る?」膀胱トレーニングの正しい考え方

「トイレをガマンすれば膀胱が鍛えられて、頻尿は治る」と言われることがありますが、むやみに我慢するだけでは逆効果になることもあります。大切なのは、医療で推奨されている「膀胱トレーニング」という決まったやり方で行うことです。

膀胱トレーニングは、

尿意を感じたときに少しだけ時間を延ばす

少しずつ排尿の間隔を伸ばしていく

という計画的な練習です。痛みや血尿があるのに我慢するのは危険ですが、医師や看護師の指導のもとで行えば、トイレの回数や尿漏れを減らす効果が期待できます。

骨盤底筋トレーニングで頻尿・尿漏れを改善する方法(仰向け・座位・立位など)

骨盤底筋は、骨盤の底で膀胱や子宮、直腸を支えている「ハンモック」のような筋肉の集まりです。この筋肉が弱ると、尿漏れしやすくなったり、尿意が強く出やすくなったりします。

骨盤底筋トレーニング(いわゆる「ケーゲル体操」)は、研究でも尿失禁や過活動膀胱の改善に有効とされています。基本のやり方は、

  • 肛門や尿道を内側からキュッとすぼめるイメージで3〜5秒締める
  • 力を抜いて5秒休む
  • これを10回1セットとして、1日3セットを目安に続ける

姿勢は、

  • 仰向け:ベッド上で膝を立てて行う(最も安全で負荷が少ない)
  • いす座位:背筋を軽く伸ばし、浅く腰掛けて行う
  • 立位:転倒が心配な方は手すりや机につかまって行う(負荷は少し高め)

というように、ADLレベルに応じて選びます。介護現場では、朝の体操やリハビリの一部として取り入れると習慣化しやすくなります。

リハビリ専門職(PT・OT)と連携して行う頻尿対策

頻尿・尿失禁の対策は、「骨盤底筋だけ」を鍛えればよいわけではありません。姿勢・下肢筋力・バランス・歩行能力など、全身の機能とも深く関係しています。

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)と連携することで、

その人に合った安全な運動メニュー

転倒予防と頻尿対策を兼ねたトレーニング

排泄に必要な動作(立ち上がり・歩行・ズボンの上げ下ろし)の練習

などを組み立てることができます。「歩ける体」「座っていられる体」を作ること自体が、頻尿ケアの一部と考えることが大切です。


頻尿のツボ・マッサージは効く?エビデンスと上手な付き合い方

マッサージの画像

よく話題になる「頻尿ツボ」「残尿ツボ」の種類

テレビや雑誌、ネットでは「頻尿に効くツボ」「残尿感に効くツボ」がよく紹介されます。東洋医学では、

  • 足首の内側付近の三陰交
  • 下腹部の中極
  • 仙骨周囲の膀胱経のツボ
  • 手の甲の中渚など

が、膀胱や下腹部の症状と関連するとされています。

ただし、これらは「ここを押せば必ず治る」というものではなく、体のバランスを整える一つの方法として考えられています。

ツボ押し・マッサージの位置づけ

鍼灸やツボ刺激が過活動膀胱や夜間頻尿に効果があるかどうかについては、最近少しずつ研究が増えてきていますが、現時点では、

  • 症状が楽になったと感じる人もいる
  • ただし、薬や行動療法ほどはっきりした効果が証明されているとは言えない

というのが、専門家の慎重な見方です。

そのため、ツボ押しやマッサージは、「標準的な治療の補助」や「リラックスのためのケア」として取り入れるのが現実的です。

安全面と、介護現場で取り入れる際の注意点

介護現場でツボ押しやマッサージを行うときは、次の点に注意しましょう。

  • 強く押しすぎない:高齢者は皮膚や血管がもろく、強い刺激で内出血や痛みが出やすくなります。
  • 骨粗しょう症・抗凝固薬の方に配慮:背骨や肋骨の上を強く押さない、力加減を弱めるなどの配慮が必要です。
  • 傷・褥瘡部位は避ける:感染予防の観点からも重要です。
  • 鍼を使うのは国家資格者のみ:介護職や家族が自己流で鍼を刺すことは絶対に避けましょう。

あくまで、「リラックス」「スキンシップ」「血行促進」を目的に、安全な範囲で取り入れることがポイントです。


頻尿の薬・市販薬の種類と注意点|介護者が知っておきたいポイント

内服薬の写真

頻尿治療薬の基本(医師が処方する薬)

頻尿の薬は、「頻尿用の薬」が一つあるわけではなく、原因となる病気に応じて使い分けることが基本です。代表的な薬には次のようなものがあります。

抗コリン薬(抗ムスカリン薬):過活動膀胱に用いられ、膀胱の「勝手に縮む動き」を抑える薬です。副作用として口の渇き・便秘・かすみ目・ボーッとする感じなどが出ることがあります。

β3作動薬:膀胱の筋肉をゆるめ、尿をためやすくする薬です。抗コリン薬より口の渇きや便秘が少ない一方、高血圧の方では血圧上昇に注意が必要です。

α1遮断薬:前立腺肥大による排尿障害に使い、尿道周囲の筋肉をゆるめて尿の通りをよくします。副作用として立ちくらみ・ふらつきが出ることがあります。

デスモプレシン:夜間の尿量を減らす薬で、夜間頻尿に使われることがありますが、低ナトリウム血症(血液中の塩分が下がる)のリスクがあり、慎重な管理が必要です。

介護者としては、「どの病気に対して、どのタイプの薬を使っているのか」を大まかに理解しておくと、副作用の早期発見や医師への相談につながります。

頻尿の市販薬・サプリメントの注意点

インターネットで「頻尿 薬 市販」「頻尿 薬ランキング」と検索すると、さまざまな市販薬やサプリメントが紹介されていますが、高齢者・多剤服用・認知症のある方が自己判断で飲み始めるのは危険な場合があります。

市販薬やサプリには、

  • 抗コリン作用を持つ成分
  • 利尿作用のある成分(カフェインなど)
  • ホルモン様の作用を持つ成分

などが含まれていることがあり、現在飲んでいる薬と作用が重なる・逆らうことで、予期せぬ副作用を起こすことがあります。

特に、抗コリン作用を持つ薬が重なると、便秘・尿閉・せん妄・認知機能の低下・転倒のリスクが高まることが知られています。そのため、市販薬やサプリを追加する前に、必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。

副作用と、医師に相談すべきタイミング

頻尿の薬には、次のような副作用が出ることがあります。

  • 抗コリン薬:口の渇き・便秘・かすみ目・尿が出にくい・ぼんやりする・物忘れが急にひどくなるなど。
  • β3作動薬:血圧上昇・動悸・頭痛など。
  • α1遮断薬:立ちくらみ・ふらつき・転倒・血圧低下など。
  • デスモプレシン:頭痛・吐き気・だるさ・ひどい場合は意識障害(低ナトリウム血症のサイン)など。

次のような変化が見られた場合は、早めに医師に相談しましょう。

薬を飲み始めてから急に転倒が増えた

ぼんやりする・話がかみ合わない・せん妄のような状態が出てきた

尿が極端に少なくなった・まったく出なくなった

強い頭痛・吐き気・けいれんがある

介護者は、「新しい薬」「増量した薬」のタイミングを意識して観察し、気になる変化があれば、遠慮せずに主治医に相談することが大切です。


性別・年代別:男性頻尿対策・女性頻尿対策と介護のコツ

利用者と職員が手を繋いでいる写真

男性頻尿対策|前立腺肥大・夜間頻尿への向き合い方

男性の場合、40〜50代以降に前立腺肥大が増え、70代以降では多くの男性が何らかの変化を抱えていると言われています。「頻尿 治し方 男」「男性頻尿対策」といったキーワードでよく検索される背景には、この前立腺の問題があります。

男性の頻尿でよくある訴えは、

尿の勢いが弱く、時間がかかる

出てもすっきりしない(残尿感)

夜だけ何度もトイレに行く

などです。これらは前立腺肥大と過活動膀胱が重なっていることも多く、自己判断せずに泌尿器科で相談することが非常に大切です。

介護者は、「歳のせいだから仕方ない」と片づけず、受診のきっかけづくりと、夜間の安全確保(照明・手すり・ポータブルトイレなど)を意識しましょう。

女性頻尿対策|50代・更年期・産後に多い頻尿

女性は、尿道が短く、妊娠・出産・更年期の影響を受けやすいため、男性よりも頻尿・尿失禁の悩みが多いと言われています。「頻尿 治し方 女性」「更年期 頻尿」などのキーワードで検索されるのはこのためです。

50代前後の更年期では、女性ホルモンの低下により、

尿道まわりの粘膜が薄くなる

骨盤底筋が弱りやすくなる

といった変化が起こり、頻尿・尿もれが増えやすくなります。対策としては、

婦人科・泌尿器科での相談

骨盤底筋トレーニング

生活習慣の見直し(体重管理・便秘予防・運動)

などが効果的です。介護者・家族としては、「恥ずかしいこと」ではなく、よくある体の変化であり、対策もあることを一緒に共有し、受診やトレーニングにつなげていきましょう。

若い世代での頻尿|20代・30代で受診を考えるサイン

20代・30代の若い世代でも、「トイレが近い」「何度も行きたくなる」という悩みを抱えている人は少なくありません。背景として、

心因性頻尿(ストレスや不安)

「念のためトイレ」が習慣化してしまい、膀胱が少ししかためられなくなっている状態

カフェインやエナジードリンクなど飲み物の影響

などが挙げられます。

一方で、若くても次のような場合は、病気が隠れている可能性があるため受診を検討しましょう。

  • 排尿時の痛み・血尿・発熱がある
  • 急に体重が減ってきた・のどが渇いて仕方がない(糖尿病など)
  • 夜間に何度も起きる・尿量が極端に多い

内科や泌尿器科で原因を調べ、必要な治療を受けたうえで、膀胱トレーニングや生活習慣の見直しを行っていくことが大切です。


介護職が知っておきたい「頻尿ケア」の実践ポイント

笑顔の介護職員の写真

頻尿でも「我慢させない」「過度にトイレを止めない」バランス感覚

介護現場では、頻尿の方に対して「そんなに何度も行かなくていいですよ」と言いたくなる場面もありますが、むやみに我慢させることは基本的に避けるべきです。ガマンは尿路感染症や尿閉、不安の増大につながることがあります。

一方で、訴えるたびにその都度バラバラに対応すると、職員の負担も増え、ご本人も生活リズムが乱れてしまいます。大切なのは、

「行きたい」という気持ちを否定しない

そのうえでスケジュールドトイレ(一定の時間ごとの誘導)などを組み合わせて、リズムを整える

というバランスです。「何時ごろに一度行っておきましょう」「いつもの時間になりましたね」といった声かけで、行動を整えていきましょう。

利用者の尊厳を守る声かけ・プライバシー保護

排泄ケアは、本人の尊厳が傷つきやすい場面です。介護職のちょっとした言葉や態度が、ご本人の気持ちに大きく影響します。

「オムツ替えします」ではなく、「体をきれいにしましょう」「トイレをご案内しますね」といった表現にする。

人前で排泄の失敗を指摘しない。できるだけカーテンや仕切りの中で静かに対応する。

「今行きますか?それともあとでにしますか?」など、可能な範囲で本人に選んでもらう

こうした小さな配慮が積み重なることで、「恥ずかしい」「迷惑をかけている」という思いがやわらぎ、安心して排泄を任せられる関係につながります。

チームで共有したい頻尿ケアの工夫事例(通所介護・グループホーム・特養など)

頻尿ケアは、一人の職員の頑張りだけでは限界があります。事業所の形態ごとに、チームで取り組みやすい工夫を共有しておきましょう。

通所介護(デイサービス):送迎前・昼食前後・おやつ前などに「トイレタイム」を設定し、一斉声かけを行う。連絡帳に日中の排尿状況を記載し、家族・ケアマネと共有する。

グループホーム:少人数の強みを活かし、「一人ひとりの排泄パターン表」を職員で共有する。認知症の方には、トイレマークや写真、矢印など視覚的な手がかりを活用する。

特養などの施設:コールが集中する時間帯を分析し、職員配置や巡回時間を見直す。排泄予測支援機器や尿量センサーがあれば、「誰に・どの時間帯に使うか」を決めて運用する。

こうした取り組みは、職員の負担軽減と利用者の安心を同時に高めることにつながります。


よくある質問(FAQ)|「排尿が近い」介護の現場の疑問に回答

FAQの画像

頻尿は治る?「治し方」「改善期間」の目安は?

頻尿が完全にゼロになるかどうかは原因によりますが、多くの場合、回数や困りごとを減らすことは十分に期待できます行動療法(膀胱トレーニング・スケジュールドトイレなど)、骨盤底筋体操、薬物療法を組み合わせることで、数週間〜数か月の間に改善が見られるケースが多く報告されています。

ただし、高齢で持病や認知症がある場合は、「完全に治す」ことよりも、

  • 夜間のトイレ回数を1回減らす
  • 失禁の回数や量を減らす
  • 転倒のリスクを減らす

といった現実的な目標を設定する方が、ご本人にも介護者にも優しいゴールになります。

どこまで水分を制限していい?脱水が心配です

「トイレが近いから」と水分を減らしすぎると、脱水・便秘・尿路感染症・血栓症など別の健康リスクが高まります。特に高齢者は喉の渇きを感じにくいため、注意が必要です。

特別な病気がない場合、1日あたりの目安としては約1.2〜1.6リットル(コップ6〜8杯程度)がよく言われます。ただし、心不全や腎不全などで水分制限が指示されている場合は、必ず主治医の指示を優先してください。

基本は、

  • 日中にこまめに水分をとる
  • 就寝前2〜3時間の多量飲水を控える
  • カフェインやアルコールは夜間に減らす

といった「飲み方と時間を工夫する」ことで、頻尿と脱水の両方を予防していきます。

トイレに付き添う回数を減らしたいとき、どんな対策がある?

付き添う回数を無理に減らそうとすると、転倒や失禁が増え、かえって介護負担が大きくなることがあります。大事なのは「回数」を減らすより、1回あたりの負担を軽くする工夫です。

  • ポータブルトイレ・尿器の活用:移動距離を短くし、付き添いの負担と転倒リスクを減らす。
  • 排泄予測支援機器や尿量センサー:排泄パターンがつかめれば、「本当に必要なタイミング」にしぼって付き添える。
  • スケジュールドトイレ:事前にトイレに誘導することで、「ギリギリで呼ばれる」状況を減らす。

また、環境整備やリハビリを通じて自立排泄ができる人を増やすことも、結果的に付き添い回数の減少につながります。

夜間だけ紙おむつを使うのは可哀想?本人・家族・介護者の折り合いのつけ方

「夜だけ紙おむつを使うのは可哀想ではないか」と悩む家族は少なくありません。しかし、夜間のおむつ使用は、転倒予防と睡眠確保のための一つの選択肢と考えることができます。

話し合いのポイントは、

  • 「おむつ=諦め」ではなく、「夜だけ安全と睡眠を優先するための道具」と説明する。
  • 吸収力の高い夜用おむつや尿とりパッドを選び、肌トラブルを防ぐ工夫をする。
  • 日中はできるだけトイレに誘導し、排泄機能や自尊心を保つようにする。

「ずっとトイレ」か「ずっとおむつ」かの二択ではなく、日中はトイレ、夜は安全重視でおむつを併用するなど、状況に合わせた折衷案を一緒に考えることが大切です。

認知症で「さっき行ったのにまたトイレ」と言われたら、どう声かけすればいい?

認知症の方は、トイレに行った記憶が残りにくく、「さっき行ったのにまたトイレ」となることがよくあります。ここで「さっき行きましたよ」と事実だけを指摘する対応は、本人の不安やイライラを強めてしまうことがあります。

望ましいのは、

  • 「トイレが心配なんですね」「不安なんですね」と気持ちを受け止める
  • 「一緒に確認してみましょうか」「少ししたらまた声をかけますね」と、安心につながる提案をする。
  • トイレに行ったあとに「さっきトイレに行きました」「このメモに書いておきましたよ」と視覚的な手がかりを残す。

「何度も同じことを言われてつらい」という介護者の気持ちも自然なものです。感情的にぶつかりそうなときは、一度深呼吸する・別の職員と交代するなど、介護者自身を守る工夫も大切です。


まとめ|頻尿ケアで「本人の安心」と「介護負担軽減」を両立しよう

利用者と職員2名の写真

高齢者の頻尿・夜間頻尿は、「年のせい」で片づけられがちですが、実際には、過活動膀胱・前立腺肥大・膀胱炎・生活習慣病・認知症・薬の副作用など、多くの原因が関わる症状です。そのまま放置すると、転倒・骨折、尿路感染症、睡眠不足、介護者の疲弊など、さまざまな問題につながります。

大切なのは、

原因を見極める:病気・認知症・薬・生活習慣など、どこに手をつけるべきか整理する。

医療と介護が連携する:排尿日誌や記録を共有し、主治医・看護師・リハビリ職・ケアマネジャーと一緒に考える。

複数の対策を組み合わせる:環境整備・トイレ誘導・トレーニング・薬物療法・福祉用具などを、その人に合う形でミックスする。

介護者が一人で抱え込まない:在宅サービスやショートステイ、夜間対応型サービスなどを上手に活用する。

頻尿ケアのゴールは、トイレの回数をゼロにすることではありません。「本人が安心して暮らせること」と「介護を続ける人の心身の健康を守ること」の両立です。

この記事の内容が、現場での話し合いやケア見直しのきっかけになり、頻尿に悩むご本人と支える介護者の双方にとって、少しでも安心につながれば幸いです。

※ 在宅介護のストレス軽減について詳しく知りたい方はこちら>>>https://asu-asu.blog/kaigo-iraira-taisyohou/


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次