介護保険制度の改定、人手不足、報酬単価の切り下げ…。いま介護現場は多くの課題を抱えています。そして、これらの未来はすべて“政治”で決まっていきます。
2025年夏に行われる参議院選挙は、介護に関わるすべての人にとって重要な転機。この記事では、現場の声を届けてくれる候補者や政策、そして「私たちの一票」で介護の未来を守る方法について、わかりやすく解説します。
なぜ今「介護×政治」が注目されるのか?

介護保険制度は「政治」でつくられる
介護保険制度は、現場の実情ではなく政治の判断で設計・改定されている制度です。
国の予算配分や財政方針に応じて、報酬単価やサービス内容の変更が行われるため、介護現場の働き方や利用者の生活に大きな影響を与えます。
例えば、要介護1・2の訪問介護が介護保険から外されるという議論は、政治的な財政調整の一環として検討されたものであり、現場では「本当に困っている人への支援が届かなくなる」と懸念されました。
制度の根幹が「政治の決定」によって動く以上、介護従事者や関係者が政治に目を向けることは避けられないのです。
介護報酬や人員基準の改定は選挙後に決まる
介護職員の処遇や現場の運営に直結する「介護報酬」と「人員配置基準」は、選挙後の政権構成や政党の方針によって左右されます。
選挙結果が与党・野党のバランスに影響し、予算審議や社会保障改革における介護政策の優先度が決まるためです。
たとえば、前回の報酬改定では「処遇改善加算」は継続されましたが、訪問介護の基本報酬は切り下げられ、現場では「これ以上の負担は限界」と声が上がりました。
今後の介護政策を現場の声に寄り添ったものにしていくためにも、「どの候補者が何を目指すのか」を見極めて投票する必要があります。
今の制度に「現場の声」が届いていない理由
介護制度に現場の実情が反映されない背景には、制度設計における「現場不在」があります。
厚労省や審議会が制度を見直す際、形式上はヒアリングや意見公募が行われますが、実際には有識者や一部団体の意見が中心で、現場のリアルな声が十分に反映されないケースが多いのが実情です。
たとえば、ICT化による効率化が制度に盛り込まれましたが、導入費や使いこなす人材の不足など、地方や小規模事業所にはかえって負担になっているという声もあります。
現場の声が政策に届くためには、当事者である私たちが政治に関心を持ち、連携団体や議員を通じて発信し続けることが重要です。
介護の未来を守る政策とは?注目すべき5つの課題

課題1:職員不足と離職の連鎖:現場の限界
介護現場では慢性的な人手不足が続き、それが離職の連鎖を生んでいます。
重労働・低賃金・感情労働が重なる中、支援が足りず孤立して辞めていく職員も少なくありません。
たとえば「3対1」配置基準では、急な欠員が出た場合に誰も休めず、ギリギリの勤務体制が常態化しています。
この悪循環を断ち切るには、人員配置の見直しや処遇改善に加え、制度的な支援が欠かせません。
課題2:介護報酬改定と処遇改善の停滞
報酬改定が現場の実態に追いつかず、処遇改善も「一部の加算頼み」で限界を迎えています。
政府は「介護職の給与を引き上げる」と繰り返しますが、実際には現場に届くのは一部手当のみで、基本給は低いままです。
たとえば、処遇改善加算の取得要件が複雑なため、小規模事業所が加算を受けられず、賃金格差が広がっている例もあります。
介護職の賃金を底上げし、安心して働き続けられる環境整備が急務です。
課題3:ICT導入と効率化への誤解
政府は介護の効率化策としてICTの導入を進めていますが、それがすべての現場にとってプラスになるとは限りません。
機器の導入費、スタッフのITリテラシー、業務量の増加など「現場に合わないIT化」が混乱を招いているのです。
たとえば、「見守りセンサーを導入したが、トラブル対応で職員が疲弊した」という声も多くあります。
ICTは導入すれば良いというものではなく、現場にフィットした設計と支援体制が必要です。
課題4:特養・訪問介護の経営難と人材流出
特養や訪問介護事業所では、報酬減と人件費の高騰により経営が逼迫し、人材流出が止まりません。
利用者は増えているにもかかわらず、経営側は「継続が難しい」と閉鎖や縮小を余儀なくされるケースもあります。
2024年度の訪問介護報酬改定では、基本報酬が下げられたことで、サービス提供時間の短縮や職員削減につながりました。
事業の安定性があってこそ、良質なサービスが維持できるという視点が、政策に必要です。
課題5:制度改定の「不透明さ」と政治の責任
制度改定の議論が不透明なまま進み、現場が事後対応を強いられるケースが増えています。
大きな方針転換や制度廃止も、実施直前になって初めて明かされることがあり、準備不足で混乱を招いています。
たとえば、過去の報酬改定では、直前まで具体的な単価が示されず、職員採用や予算編成に影響が出た事業所が多くありました。
現場を置き去りにした制度運営ではなく、透明性と予見性をもった議論と説明責任が求められています。
全国介護福祉政治連盟とは?私たちの声を国に届ける仕組み

設立目的と活動内容
全国介護福祉政治連盟は、介護現場の声を政治に届けることを目的に設立された政治団体です。
介護保険制度の創設と共に発足し、制度改正や介護報酬改定に際して、国会議員への要望提出や意見交換を継続的に行っています。
たとえば、加算制度の見直しや処遇改善に関して、現場からの意見を取りまとめて厚労省や与党議員に届け、反映された政策もあります。
現場の声を無視した制度設計が行われないよう、政治の場に“当事者の視点”を届け続ける役割を果たしているのです。
「全国老施協」との関係
全国介護福祉政治連盟は、全国老人福祉施設協議会(全国老施協)の政治的な活動部門として位置づけられています。
全国老施協が現場の課題や制度への提言を行う一方で、その実現のための政治的交渉や働きかけを担っているのが政治連盟です。
たとえば、報酬改定時に老施協が提案した内容をもとに、政治連盟が国会議員との調整や陳情を行うことで、政策実現へとつなげています。
現場と政治をつなぐ「橋渡し役」として、両者は密接に連携し、介護福祉の向上に取り組んでいます。
組織内候補擁立と資金規模の課題
政治連盟は過去に組織内候補を擁立した経験がありますが、医療系政治団体と比べて資金や支援体制に大きな課題を抱えています。
同様に組織候補を出しても、当選できるかどうかは会員数や資金力によって大きく左右されるのが現実です。
実際、2022年の政治資金収支報告では、医療系政治連盟の会費収入に対し、介護系は500分の1〜600分の1程度と大きな差があることが明らかになっています。
安定的な資金確保と支援基盤の強化がなければ、現場の声を届ける政治力を維持・発展させることは困難です。
注目の候補者紹介|全国老人福祉施設協議会推薦
そのだ修光(そのだしゅうこう)氏 鹿児島選挙区

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和田政宗(わだまさむね)氏 比例区

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釜萢 敏(かまやちさとし)氏 比例区

オフィシャルサイト
https://www.dr-kamayachi.jp/
フェイスブック
https://www.facebook.com/nihonishirenmei
候補者の理念と経歴
介護現場の声を代弁する候補者には、現場経験や介護政策への理解が不可欠です。
全国老人福祉施設協議会が推薦する候補者は、介護・福祉をライフワークとし、制度の矛盾や現場の課題に真摯に向き合ってきた実績を持っています。
候補者のそのだ修光氏は、鹿児島市で社会福祉法人を運営し高齢者・児童福祉に取り組んでおられ、参議院議員就任時には現場視点で法改正に取り組んでこられました。
机上の理論ではなく「生活に寄り添う政策」を掲げる候補者を選ぶことが、私たちの暮らしを守る最短ルートです。
リーフレットの内容
候補者からのリーフレット(※1)には、介護職や利用者に向けた強いメッセージが込められています。
制度の見直し、報酬アップ、人員配置基準の現実化など、現場の課題を正面から捉えた政策提案が多数含まれています。
特に「介護報酬は命の報酬」という言葉は、多くの職員の共感を呼び、現場に寄り添う姿勢を感じさせます。
一方的なスローガンではなく、現実を変える「実行力のある公約」が示されているかを見極めましょう。
※1 全国介護福祉政治連盟 R7.7参議院議員選挙における各推薦候補者リーフレット
公式アカウントやSNSでの情報発信
候補者の公式SNSやアカウントでは、日々の活動報告や政策に関する説明が発信されています。
リアルタイムでの発言や動画、現場視察の様子を確認することで、その候補者の“本気度”や“現場感覚”が伝わってきます。
たとえば、訪問介護の現場を視察した候補者が、SNSで「この報酬体系では人が続かない」とリアルな感想を投稿し、支持を広げたケースもあります。
ネット時代だからこそ、言葉と行動を一致させているかを自らの目で確認できる時代です。
私たちの「介護の声」を届ける方法

投票することが最大の意思表示
選挙で一票を投じることは、介護の未来を左右する“最もシンプルで強力な行動”です。
介護政策は政治によって決まり、その政治家を選ぶのは私たち有権者です。
たとえば、「処遇改善を訴える候補に票が集まれば、他の候補も無視できなくなる」という現象は現実に起きています。
投票は単なる選択ではなく、「声を上げる」行為そのもの。選ばれた人が未来をつくるなら、選ぶ私たちにも責任があります。
地域でできる選挙活動の応援とは?
選挙は政治家だけのものではなく、私たち市民も応援者として参加できます。
ボランティアでのチラシ配布や、SNSでの情報シェア、地元での勉強会など、できることは意外に多いのです。
たとえば、施設の中で職員や家族と候補者の政策を比較し合う場を持つことで、自然に投票率が高まり、候補者にも励みになります。
小さなアクションが社会を動かす原動力に。関心を行動に変えることが政治を変える第一歩です。
現場から政治家へ届ける手紙・陳情
現場の困りごとは、政治家や地方議員に直接届けることで政策につながる可能性があります。
特に介護職や管理者からの手紙や意見書は重視される傾向があり、丁寧な声は届きやすいのです。
実際に「○○市の特養職員からの陳情で、地域加算の見直しが検討された」といった事例もあります。
遠く感じる政治も、紙1枚でつながることができる時代。思いを行動にして届けることが制度を変えるきっかけになります。
全国介護福祉政治連盟への支援方法
介護の声を継続的に政治へ届けていくためには、全国介護福祉政治連盟のような専門団体の活動を支えることが重要です。
年会費による支援や、活動情報のシェア、地元の候補者の応援など、さまざまな形で関われます。
たとえば、現場で働く職員が会員になり、仲間にその意義を広めることで、政治連盟の影響力が拡大し、政策提案力が強化されます。
「一人ではできないこと」も、組織の力を借りれば実現可能です。自分の職場と制度の未来を守るための“投資”と考えましょう。
「介護職は政治に無関心」はもう古い

若手介護職の声が変化を生む
近年、若手の介護職が政治に対して積極的に意見を持ち始めています。
制度や環境に直接影響を受けるからこそ、「変わってほしい」という切実な思いが芽生えているのです。
たとえば、SNS上で「介護報酬の見直し」や「休憩が取れない勤務体制」について声を上げた若い介護士の投稿が、多くの共感を呼び、政治家にも届いた事例があります。
声を上げれば、無関心というレッテルはすぐに剥がれる時代。現場の声が社会の意識を変える力を持っているのです。
「私が変える!」という意思ある一歩の力
「どうせ変わらない」とあきらめるより、「自分の一歩が未来を変える」と信じて動く人が現場に増えています。
それは投票でも、意見提出でも、SNSでの発信でもかまいません。
たとえば、ある施設職員が政治連盟を通じて声を届けた結果、「処遇改善加算の対象拡大」に関する議論に影響したという例もあります。
“誰かが”ではなく“自分が”動くことで、介護の未来は確実に変わっていきます。そんな時代が今、始まっています。
夏の参院選で「介護の未来」を選ぼう

候補者を見極める5つのチェックポイント
候補者を選ぶときは、政党名だけでなく「介護政策への本気度」を見極めることが大切です。
特に、次の5つの視点で候補者をチェックすると、その人物が本当に“介護の未来”に向き合っているかどうかが見えてきます。
見えにくい時代だからこそ、「言葉と行動の一致」を重視して一票を投じましょう。
投票前に読んでおきたい政策パンフレット
選挙前には各政党・候補者が配布している「政策リーフレット」に目を通しておくことをおすすめします。
介護に関する記載の有無・分量・具体性などから、その候補者の「本気度」が如実に伝わってきます。
たとえば、ある候補者のパンフレットでは「介護職の年収を全産業平均並みに」と明言されており、実際にその言葉を公約として掲げて選挙戦を戦っています。
ネット上でもPDF形式で閲覧できるため、家族や職場の同僚とも共有して“読み比べ”をしてみましょう。
家族・仲間と話すべき「一票の重み」
一票は小さな力ですが、家族や仲間とその「意味」を共有することで、社会に与える影響力は何倍にもなります。
介護の現場で感じる不満や期待を言葉にし、誰に託すかを話し合うことが、最も身近な政治参加です。
たとえば、ある施設では選挙前に「介護政策に関する勉強会」を開き、結果として職員の投票率が大幅に上昇したという例もあります。
社会を変えるのは“誰か”ではなく、“私たち”です。一票の重みを知ることから、変化は始まります。
【まとめ】一票で変える、介護の未来 ― 声を届けるのは今
介護制度は、日々の暮らしに直結する「政治そのもの」です。
介護報酬、配置基準、利用者負担、処遇改善――これらはすべて、選ばれた政治家たちによって決められています。
だからこそ、夏の参院選は“未来の介護”を選ぶ場です。
無関心でいることが最大の損失。「声を上げる」「投票する」「支える」その一歩一歩が、制度をつくり、暮らしを守ります。
今こそ、介護に関わるすべての人が、行動する時です。
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